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海戦ノ實験ヨリ改良意見
一、攻防ノ要器即チ兵器甲鈑等ニ就テハ改良意見ハ既ニ戦闘詳報ニ
詳記シアリ且従来多数ノ称道スル所少ナカラザルヲ以テ更ラニテ囋ヲ換ヘ
テ鋪地ナシト信ズルヲ以テ茲ニハ最モ卑近細微ナル一、二ノ意見ヲ述ベントス
一、補索用トシテ「スチール、ワイヤ」切断器ノ必要ヲ認ムル―――
従来網索ヲ主用セル際ハ大抵ノ火索ナリト雖モ必要ニ応ジ水兵が其
「ポケット」ニ有スル「ナイフ」ヲ以テ切断シ得ルニ難カラザリシモ近時鋼索
ノ主用トナルニ至リ必要上之ヲ切断センガ為メ他ノ障害トナル場合ニ常ニ
適当ナル切断器ヲ随身セザル為メ如何トナスニ雑キラ見ル現ニ当
海戦ノ際「ヤール」「マスト」切断シ中途ニ懸垂スルヤ速カニ之ヲ取
置ントシテ附近ノ障害ヲ除クニ熱中シ「ブレース」カツター等調索ヲ
中途ヨリ切断スルノ必要アリ見タルモ之ヲ切断スルノ器具ナキ為メ取
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外カニ又ハ平坦ナル処ニ引付ケ叩キ切ルカ外ナラザル敵ニ治メラル
憾アリキヨシ「クリップ」ヲ備ヘズトモ稍々長キ索ニシテ纏絡スル所ハ
容易ニ解ケズ難ク斯ル突嗟ノ場合ニハ切断スルノ処置最局
最速ナリトス
斯ル場合ニ対シ補索員ガ其腰キリ（？）ニ一一種ノ大鋏（俗ニ
「ヤットコ」ト称スル釘抜形ノモノヲ「スチール」ニテ締メ附ケ切ルニ収置を
或ハ有効ナラシム）ヲ帯シ居ルカ又ハ二吋内外ノ鋼索ヲ難ナク切断
シ得ルモノナリシナラバ實ニ有効ナリシナラント感ズルコト最早水兵
ガ「ナイフ」ノミテ動作スベキ時期ハ非ズ斯ノ如キ器具ヲ撰送付
与セラレンコトヲ望ム
二、防禦片及具適附位置設備ノ必要ヲ認ム―――
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釣床ノ弾片破片防過スルノ効力ハ最早多言ヲ要セズ異議ナキト信ズ
尚ホ毛布類ハ防水用トシテ卑見填塞ニモ必要ナルハ信ズベキ実例
ナト思フニ斯ク戦闘ノ際ニ釣床ノ応用廣キヲ以テ本艦ノ如キ
ハ有餘ノ釣床ナリト雖比之ヲ摺（？）方面ニ用フルニ大ニ不足ヲ訴
ヘ為メニ波此相讓歩シ幾許カ節用セシムル已ムヲ得ザルニ至レリ
必要ナル方面具（？）シテ比（？）レバ必ズ頭ヲ送憾トナス且ソノ甲板以上ニ
釣床ヲ用充テ之ヲ備フル一人シキニ至レバ長ジテ汚損シ戦前戦後
ノ休養ヲ欠く所少ナカラズ故ニ釣床ニ相似セル防禦片具ヲ戦時ニ
特ニ場所ヲ設備セラルル必要アリト信ズ盖シ此具ハ船内汚損ヲ防テ
用途多キヲ以テ多々益々辦ズルニシム
又今回ノ準備ニ釣床ヲ備フルヤ臨時ノ処置トシテ之ヲ手荒ナ（？）ナル
索ヲ張り之ニ釣リ若クハ縛セルニ過ギズ「ハンモック」ハ管ノ見ル処ニ依レバ「ボート
ダビツト」案ハ懸垂リ置カレテ釣床ハ固定ノ可ナキ在バ務テ防禦
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片ヲ必要スル場所ニ前記防禦具（即チ釣床相似ノモノ）備付位置
ヲ装設シ万一ニ比装置ニハ充分該具ノ厚キヲ使用スベカラズ薄
キ鉄骨ノ周囲ニ「カンバス」ヲ以テ被ヒ其物ハ釣床ヲ子（？）ラザル厚ク
短キモノヲ相並列セルモノヤリス又弾丸炸裂ノ勢力ニテ全体飛散セザ
ル様上下ニ相舊（？）シ他ニ固定シ居リ要ス（字キリ男子（？）ニ具備セザル為
ヲ短カリシ等（？）ニ一箇所飛散スルヤ他ニ累ヲ及ボスガ為メ）
此構造内ニハ平時ハ甲板要具雑品等ヲ置ク場所トシ戦時ハ防
弾片具ヲ充テ一方ハ一掃ニ填塞スベキ場所トス
戦ハ始マリナレバ一層有効ナルベシト信ズ「マスト」ノ周囲等亦之ニ
準ス
三、平素船内ニ備付アリ戦時ニ不用ナル取附具又ハ成ルベク戦時ニハ取
用シ得ル様構造シ得ベキモノアリト認ム―――
艦野準備トシテ平素船内ニ備付ル器具ヲ陸揚スルモノ多キハ今時ニ
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又戦時ノ必要品トシテ積込ムモノモ少ナカラザルガ之ガ為メ時間ト経費トヲ空
済（？）シ究竟トシテ考フレバ改良ノ餘地少ナカラスト信ズ
假令ヘバ「メステーブル」及「膳掛」ノ如キ多数ノ船ハ大部分ヲ陸揚セリト認
ム然ルニ若シ其大小及構造ヲ意急防水板トシテ利用セラルル様ニ
ナシアリトセバ戦時ト雖モ陸揚スルノ必要ナク戦機迫リ之ヲ各部
ニ配シ置キ必要ハ臨機活用スルヲ得ベキナリ現ニ大小共度々
通セズ構造ヲ革メ食事膳掛タルヲ通ズルモノニシテ他ニ顧慮スルコト
ナキ為メ戦時ニハ不用視サレ更ニ防水板トシテ別ニ働ヘザルヲ得ザル
ニ至リ来ルニ至ルヲ見ルハ豈妙ナラズヤ
天井ニ厄帽子置キ棚、「サイド・ボード」手箱棚モ亦頗ル数多ノ
モノナリ之レモ適当ニ大小ヲ定メ構造ヲ考へ組ミ合セバ「ツ
ナ」ヲ充（？）空気抜海扇ノ為メノ如ク利用ノ方法ヲ基礎トシテ
構造シ置キタナラバ很ム之ガ為メ辛苦シテ調査シ必要ナルベシト信ス
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右意見提出候也
明治三十八年六月十五日
海軍中佐 松村龍雄 (印)
三笠艦長 海軍大佐 伊地知彦次郎 殿
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日本海々戦ノ鑑ミ施設ヲ必要ト思考スル事項
一、今回砲戦中敵ノ主要像ハ前飛橋操舵室ヨリ最上飛橋甲板ヲ下リ実ニ中リ
幸ヒニ羅針儀周囲ニ釣床ヲ以テ巻囲ミ釣床ヲナルベク長サ（？）下江下ルヲ負傷
者ヲ生ズレドモ羅針ハ今後戦期ニ釣床ヲ全甲板上一周ニ敷キ詰メテ遮ルニ於
布ヲ以テ覆フヲ得策トス
一、前最上飛橋及前飛橋羅針儀ハ或ハ全時ニ破壊セラルル恐アルヲ預備トシテ小型
羅針儀一箇（艦橋其他附屬品共）ヲ増供シ置ヲ必要トス
一、最上飛橋羅針儀盤艦ニ沼フ直シテ司令塔操舵手ノ面前ニ通ズル傳話管
一ヲ増設ヲ必要トス之レ戦闘中喧噪ノ際他ノ人令ヲ経ズシテ羅針儀
監視者ハ直接ニ号令ヲ得ルノ利益コバナリ
一、當面ノ如ク航橋信号索切断セラルル準備トシテ前橋ヨリ平生ヨリ後橋ヲ経由シテ下ルベキ装置
置ノモノヲ数ケ置キ忠モ修リ信號索ヲ取附ケ航海中前後二様ノ航橋信号ヲ為スヲ可
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トス一ハ無事ナリ之レ急人力僅テ交戦中喧噪際頻々変ル艦ノ對シ精確ニ信
号スルハ困難ナルヲ去ル時ハ間違いヲ起ス恐レシトス
一、今回砲戦中距離測定儀図（？）激動ノ為メ幾分ノ誤差ヲ生ゼリ血ト預備品ト備ヘタル此時ニ際
別ニ一個ヲ附盤上ニ備ヘアルヲ以テ測距ヲ継続スルヲ得タリ元三脚架ノ場所ハ窒塞ノ彩アル
且ツ丈低キ為メ人々ノ身体等ニ妨ゲラレ使用ニ困難ナルナラバ磨動ヲ受ルヲ多キヲ
以テ成ルベク平生ヨリ航橋ノ両側ニ堅固ナル甲板ヲ出シ其処へ各基ヲ安置ノ
台ヲ据付ケ置ヲ要トス一ハ一個故障スルモ差支ナク亦相手ノ誤差ヲ発見スルニ容易
ナルベク尚両舷戦闘ノ時ハ二層必要ナリトス
一、前部司令塔ノ上部周囲鉄板ハ甚ダ薄キ故小弾片ト銃ノ貫通シタル負傷者ヲ出セリ
成ルベク厚板ニ改メ之シ
右意見提出候也
明治三十八年六月十一日
航海長 布目少佐 (印)
伊地知三笠艦長 殿
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命ニ依リ別紙及提出候也
明治三十八年六月二十日
海軍少佐 安保清種
三笠艦長 伊地知彦次郎 殿
海軍
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日本海々戦ニ於ケル実験事項及
将来ノ改良ニ就テノ希望
三笠砲術長 海軍少佐 安保清種 (印)
一、砲火ノ指揮ハ全然艦橋ニ於テ行フ種ナルヲ原則トシ指揮ニ関ス
ル通信系統ハ必ズ之ニ基キテ設計スルヲ要ス
射距離内ニ於テ菌頭ヲ給ゲ船橋ニ入ラシムルコトスラ困難ヲ認
メタ然ルニ四千内外ノ距離ニ於テ我ガ集弾ヲ目標トノ位置ノ都
合ニ一秒ヲ争フヲ要スルコト屡ナリ臂言バ司令塔ヲ始ムド沈黙シタ
ル之后部艦橋尚存スルハ此部ニテ集弾ヲ要スルガ如キ則チ然ラバ
是迄ノ菌頭ト其基準ヲ艦橋トナスル事極メテ緊要ナリ
艦橋ヨリノ通信連絡壮絶ニ至ル場合ニハ砲台若クハ各砲ノ獨断
専行ニ任ズル１團多クナリト雖ニ是レハ自カラ程度ト或種ノ
通信装置若クハ破壊スモ艦橋ノ本能ニシテ全廃セラルル
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限リハ令達伝令品ヲ最后ノ通信手段ト致トシ飽迄「ブリッジ」コント
ロールノ主義ヲ持続スルハ多少発射速度ニ関係及ボス（ギ）ト比較
的不確実ナル砲台若クハ各砲ノ独断専行ニ優ルコト萬々ナリ
今回ノ海戦ニ於テ本艦デハ甲七番砲廓甲板散彈ニ破レ廓内
砲員悉ク死傷シ通信機関亦破壊セルニ中勇敢ナル奮砲手ハ
疾悪デ獨リ砲側ニ着ズ自ラ弾薬ヲ装填シ一發毎ニ支障
廓外第中甲板伝令員ニ就キ「今距離菌頭ハ確メテ」縦横
人ニ調ヲ以テ有効ナル発砲ヲ継続シタリ又タ六甲三番砲廓ハ戦
闘ノ初期敵弾ノ被イテ指揮塔ヲ艦橋ニ通ズル通信伝装
置ハ悉ク破壊セラレタルニ傳令員五層外ニ出シ艦橋伝令員
板ト注意セラレ終期迄有効ナル通信ヲ確保シ得タリ蓋シ激戦
降（？）一発毎ニ危側ヲ窺イガ如キハ或ハ廓外ノ一伝令ヲ配スルガ如キハ
コトモドカシキ観アリト気御不確実ノ縦横尺ニヨリテスル命令中ナキ
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速射ノ優レル創砲大ノ指揮ハ艦橋本能廃セザル限リハ
終始艦橋ニ於テ之ヲ司ラザル可カラズトノ断案ヲ下スニ憚ザル所ナリ
二、他戦ノ要訣ハ沈着精確ナル射撃ヲ以テ努メテ多数ノ命中
ヲ期スルニアリ今回ノ海戦ニ於テハ比較的近距離ニ存シテモ主ト
シテ徐射若クハ斉射ヲ用井命中確実ヲ博シ得タリ然ルニ昨花見等
教範ニ規是シアル徐射ナルモノハ則チ其必要ヲ認メズ門毎ノ
発射速度ヲ著シク制限スルハ反ッテ射手ヲシテ無為ニ困マシメ
且ツ砲台一般ノ努力不経済ヲ免レズ寧ロ砲台ノ情況発射ヲ
以テ常射ヲ行ヒ所謂砲数ノ制限若クハ全艦ノ射撃速度
ヲ加減スルヲ可トスルガ如シ従ッテ徐射ハ辨音ト其必要ヲ認メザル
ニ非ズ戦闘際斉射若クハ徐射ト復セントスル場合ノ如キハ往々
怠射ト辨音ト誤解シ来ス恐レアル覚ユ
三、散陣形混乱ノ際ハ各艦左往右往ノ運動スルヲ以テ各砲
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台ヲシテ誤リナリ艦橋ヲ令スル同標ヲ會得セシムルハ頗ル困難ノ感
ズ殊ニ目標変更ノ際ノ如キハ酣戦中遽ニ一時打方ヲ中止シテ
普ネク同標ヲ會得セシムルノ必要ニ迫ラルヽコト多シ
此場合ニ於ケルハ艦橋及各指揮塔ニ刻度「ボイルター」ナ
備ヘ各砲単ニ悉ク旋回度ヲ劃シ置十正横線ヲ基線トシ最
方何度ニアル二煙突戦艦、後方何度ニアル三檣敵艦ト令スルガ如
キ尤大ニ所令ノ同標會得ヲ速カナラシムルノ一手段ナリトス又タ指
揮塔ヲ少シク外方ニ突出セシムル等耳構造ニ多少改良ヲ施シ塔
内ヨリ直接砲台ノ身ヲ視得ル様ニシ砲台長ヲシテ毎ニ塔下ニ
請砲ガ果シテ同標ヲ語解シ居ラザルヤ否ヤヲ確メシムルモ極メテ
緊要ナリ
四、海戦際彼我會シ打方ヲ開始スル場合ニハ毎ニ試射トシテ一舷六尹
砲ノ斉射ヲ用井シ或場合ハ其単発試射ニ優ルト速キヲ感ゼシメリ
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五、砲戦際看弾ト混同シ同艦者ノ識別ヲ能ハザルニ至ラバ近
戦中ニ存テモ一時打方ヲ中止シ更ニ一斉試射ヲ以テ砲火ヲ再始ス
ルコト最モ緊要ナリ
六、混戦中同艦及僚艦ノ落弾同標ノ螺集スル場合ニ於テハ四五千米外ノ巨商ニ
存テハ数発ノ瞬時ヨリ直飛飛行ニ注目シ同六艦橋ヨリ自艦十二尹砲弾ノ弾
着ヲ区別シ得ルコト比較的容易ナリシ
七、高度低キ日光ニ面シテ砲戦ヲ交ルハ距離ノ困難ト光ノ角度弾着ヲ識別
シ能ハザル点ニ於テ極メテ不利ナリ廿七日海戦ノ末期ニ於テ「ボロジ」ノアリ
「ヨール」等ニ対スル際ノ如キハ日光ノ為メ艦橋ノ僅ニ十二尹砲弾ノ弾
着ヲ認メ得ルニ過ギズシテ専ラ上檣楼監視校（？）ノ報告ニ頼ヒ弾
着ノ修正ヲ施シ克ク到リ其効果少ナカラズ悟リ一時打方ヲ中止スルノ巳ム
得ザルニ至リ風波高キハ凡下ノ位置ニハ不利ナル之ヲ譲ラズ
八、上檣楼ノ弾着監視将校ノ配スルコト上檣楼ト艦橋間ノ通信確
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保ハ緊要事項ナリ
九、下瀬弾ノ特長タル爆烈効果ハ別問題トシテ其命中弾ノ顕著
ニシテ遠巨商ニアリテ容易ニ識別シ得ルノ点ハ実ニ砲火指揮上偉
大ノ効果アルヲ認ムト同時ニ其近弾ノ著シク敵ノ照準発射ヲ妨グル
効アリシハ益々其實証ヲ示シタリ
十、我下瀬弾ハ海ニ命中佃所ニヨリ其爆煙ヲ認メ得ザリシ事往々アリ
殊ニ徹甲弾ニ於テ然リトス恐ラクハ船体ヲ貫通セル場合ナランカ我十二
尹砲弾ガ五千二百ノ巨商ニ於テ工作船「カムチャッカ」ニ命中シ遂ニ
爆煙ヲ挙ゲザリシモ其一例ナリ
十一、海戦中目撃シ得タル限リニ於テハ水面ニ打チタル我砲弾ノ約参
ハ一爆烈セリ敵弾我艦ニ命中シ爆烈セザリシモアリシモ又往々
水面爆発ヲ致シタルモアリシ
十二、十二尹砲団ヲ大尹砲ニ於テ交戦中一発毎特製ポンプヲ以テ膅中ヲ
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洗浄セシムルハ砲身冷却ト人自身ノ有効ナリシノミナラズ自然濫
射ヲ防ギ砲員ノ頭脳ヲ冷静ナラシムルニ間接ノ利アリシヲ認メタリ
十三、四、五百米突以外ノ射距離ニ於テ十听以下ノ他負受傷
員等ハ毎ニ防御郭内ニ位置セシムルハ大ニ死傷者ヲ減少セシムルノ因ナリトス
戦門中必ズ実施ス（キ号剏（？）ノナリトス
十四、六尹及十二听砲膅弾機ハ今回戦闘中殆ド故障ヲ見レテ其
供給速度ハ意ニ不足ヲ感ゼザリシ然シテ各揚弾機ノ「チューブ」トシテ通
ズル滑輪ノ周風（？）吃本帯リ巻ン危ト十二听揚弾機ノ一部ハ「チェーン」
ニ摸ル索ヲ以テシタルハ大至部ノ喧噪ヲ減ジ號令傳達障害ヲ少ナカラ
シメ敵ノ陣形混乱ノ場合ニ際シ夫々往々二様ノ同標ヲ標グノ必要アリ
且ツ両舷戦闘ノ必要トシテ巨商測（？）是是ハ必ズ二個ヲ艦橋若
クハ其附近ニ常備スルヲ要ス同一同標ニ対スル場合ニアリテモ両者ヲ
参考トスルハ大ニ利アルノミナラズ激動ニヨリ中途ニテ置ク否ヲ生ジ
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支障ヲ受候際一方ニ於テ有効ナル測距ヲ継続シ得ルハ至大ノ
利益ニシテ今回自然ニ実験シタル処ナリ
去ル冬砲囲池座庫照準訓練他ノ等ハ万敵ヲ将ミスルニ使用シ飯田（？）ノ劇
兩寒暑ト曝露スル多寡等種々ノ偶然（？）戦時特ニ其害キヲ
見ル本艦ニ於テ本年一月 中旬 呉出港以来五月上旬マデ約三ヶ月
間ニ此種ノ電吾五克九十四佃中不能ニ帰シタルモノ其数実ニ百八十三佃
ノ多キニ及ベリ
今不能帰セン電吾ノ實平均百ハジリ夫レ六（？）ンダル処ヲ尚参考トシテ左
ニ八佃ニ於テ実験シタルモノヲ併記ス
（表）
三笠 自卅八年一月十五日 至同 五月十日 実平均所欲電吾百分比 蓄電池 器電地 乾電池 上乾蓄 合計
八雲 卅七年三月出港 以来約九ヶ月間 同 右 一〇七六 七．〇 四二六 八．〇
売シテ各艦ノ毎月約一割ノ電吾ヲ失ヒツツアルモノニシテ三笠ニテハ毎月平均
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六十余個ノ電吾ヲ新ニスル必要アリ幸ニ之ヲ佐世保運送船等ノ便豊
ナリシヲ以テ毎ニ良好ノ状態ニ保チ得タリシモ极テ戦場ニ臨ムヤ風波
荒レシ海水暴リテ他門ヨリ進入シ中甲板危ノ装危電地ハ短電
疎（？）断不能ニ帰セシモノ多ク二十二（？）ニ頼使用シタリシハ「トレスフォー
マ」引ノ「ダイナモ」電流ナリシ然シテ戦斗中他ノ撃発装置ノ如キハ
遺憾ナカラ最后ノ副装置トシテ信頼シ難キヲマリ各艦危砲ノ「ダイナ
モ」電流ノ應用ハ特意必要ト見ル又廻転盤ノ如キハ平素ニ存テ
敵兩其電池ヲ侵サルヽコト多ク海戦考ニ月如キ殊ニ甚ダシカリシ
ト云フ驅逐艦装備ノ十二听砲ニ限リ全然撃発専門ヲ放
ムルヲ寧ロ簡単ニシテ有利ナリト認ム
十七、通信機関ノ遵守ニ防御部内ニ通ズハ固ヨリ緊要ナリト屈氏
傳話管ノ如キハ其意弯曲延長結果大ニ通信ノ明瞭ヲ欠
クヲ免レズシテ今回ノ戦闘ニ於テ司令塔ト后部六甲指揮塔
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ニ通ズルモノ如キ殆ンド用ヲナサザリシ艦橋ト前危塔底各
指揮塔間ノ如キ砲大指揮上最モ緊要ナル佃所トハ別ニ副装
置トシテ成ルベク屈曲ナキ大至直通伝話管ヲ導キ其破壊サレ
一近間極メテ有効ナル指揮ヲ継続スルニ動カラザルノ利益アリ
又声伝話機ハ酣戦ノ際ニ於テハ蓄音機的一種異様衆音
ヲナスヲ以テ場合ニヨリ傳話最モ有効ナリト云フ
十八、小式距離儀ハ令通報貴ハ戦闘中毫モ故障ナク終始有効ナリシ
十九、由来飛行中ニ於ケル長弾運動ノ軌跡ト弾道切線ト
或ハ角度ヲナシ遠キニ従ッテ其角度ヲ増シ弾頭ハ畫（？）軌跡ニ沿ヒ
延伸スル「スパイラル スプリ」グ様ノ形状ヲ呈スルニシテ弾長ノ大ナルニ従ヒ
弾丸重点ニ於ケル曲線旋動ノ度ハ一层（？）ヨリ増加スル免レズトセバ我
鍛鋼弾如キ弾長大ナルハ遠距離ニ対シテハ自然其弾軸ヲ正當
ナル方向維持シ得ベキヤ否ヤ聊カ疑問ヲ能ハザルナリ
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核順及捕海ノ間接射撃ニ於テ我十二尹及八尹砲弾ノ爆裂
セザリシモノアリト云フガ如キ八月十日海戦ニ七千内外ノ距離ニテ「アスコ
リッド」ニ命中シタル我八尹砲弾ガ爆裂セズシテ其儘石炭庫ニ存留セリ
ト云フガ如キ時ハ今回戦闘ニ於テモ捕虜将校（旗艦「スロロフ」ノ参謀長
兵砲術士官ナリト云フ）ノ談ニ所ナリト云フ聞リ之我砲弾中ニ著シキ長
口呈弾アリテ其命中セル場合ニ同ジ爆烈スルモ其飛来ノ状態ハ
恰モ跳弾ノ如シテ明カニ他ト区別シ得タリト云フガ如キ果シテ然ラバ
セバ我鍛鋼弾七、八千以上ノ巨商ニ於ケル命中弾幾分或ハ爆裂
セズシテアルモノアルヤ疑ウザルヲ得ズ尚斯弾飛行ニシテ斯ク
現象アルトセバ徹甲弾ト同一縦尺ヲ以テシテハ命中ニ渺茫影響
ヲ及ボス懸念ナリセズ造兵上特ニ講事究ヲ要スベキ心トシテ唯ダ慮
其弾長ヲ短クスルガ如キ造ヲ鍛鋼榴弾ノ本能ヲ滅却去ルニ過ギ
ズ此辺研磨ノ多名ノ考慮ヲ切望スルモノナリ
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我徹甲榴弾ノ装甲鈑ニ対スル効果ハ不明ナルモ徹甲実弾ヨリ
必要ナルハ否ヤニ就テハ民ニ講究ヲ望ム
二十、海戦点検トシタル所ニヨレバ后砲塔十二尹砲身ハ約三ミリ昇製去レ
平砲身ハ約二ミリ其内筒ハ砲口方ニ逬出セル実績アリ左ハ何レモ本
年一月呉工廠ニ於テ換装シタルモノニシテ新砲ニシテ号数装
砲子ナケレバ其内筒延出ハ或ハ免レザルモノナラシカ
二十一、六尹砲尾栓脱ノ豫備ハ十門ニ対シ三個アリテ従来積載ノ安
社製砲ト対シテハ孰レモ適合セリシガ本年一月換装シタル呉製
砲七門ニ対シテハ一ツモ適合セズ依テ今回月工作艦関東丸ニ依
頼シ内一個ヲ製砲ニ嵌合スル様摺合セヲ施シ色厄是砲ノ甲ヒ
適合スルモ必ズシモ其い（？）丙ニ適合セ能ハザルノ発見セリ則チ是等砲ノ
各門ハ全ク尾栓逬豫備ノ有セザルト同様ニテ準備上頗ル遺憾
十ナ欽ズ号数ノ制作ニ際シ各部厘毫ノ差異ハ固ヨリ免レザル
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處ナリト雖斯種ノ和キ尾栓装置ノ緊要之部ニ対シテ造兵
上一層注意ヲ切望スルナリ
二十二、「ボートデッキ」十二听砲準備弾ニシテ其甲板ニ候列シアリシモノ
八個ハ敵弾命中ノタメ悉ク誘発シ然レモ其位置ハ直接六尹
鉄板ノ「ロッカー」内ニ格納シアリシ十二听準備弾十個ハ「ロッカー」壁
板甚ダシク破レタルニ拘ハラズ毫モ異条ナカリシ十二听砲準備弾
函格納用鉄「ロッカー」ノ設備ハ最モ其必要ヲ見ル
二十三、六尹砲廊天蓋ハ敵古尹弾ノ命中爆裂スルヤ其直下ニ未完半
備シタリシ廓内後壁弾片防禦鋼板弾三個（各四三〇〇ミリカ）
ノ装填シ三番砲手抱キ居タル鍛鋼弾一個ハ未突乃至四米
突ノ距離ニ吹飛バサレ其導環ハ孰レモ離脱シ弾頭弾底ノ一部
ハ缺損ヲ生ゼシモノアリシモ一ツモ炸発ヲ起サザリシハ幸ナリシ然レモ危機
ハ真ニ一髪ノ間ヲ存セザリシモノニシテ最モ射出海戦ニ痛悔ナル
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繋手ノ例ナリ今回ノ海戦本艦ニ於テ上甲板砲廊ノ天蓋ヲ
破シシモノ三弾及ベリ司令塔砲塔ノ砲廊ノ処キ主要部ノ天蓋
ハ充分防禦ヲ必要トスルハ既ニ吾人ノ屢々唱道シタリシ処ニシテ今サ
ラ新艦ニ対シテハ其断行ヲ切望スルモチリ
二十四、本艦ニ於テ防禦部外側ニ敵弾ヲ被ムルコト十二尹砲弾二発六尹
砲弾五発シテ十二尹弾ノ孰レモ五十外ノ距離ニテ下甲板古甲飯
ヲ貫キ本底ノ石炭庫ニ其破片ヲ留メ六尹弾ハ五五〇〇乃至
五八〇〇ノ距離ニ於テ一弾ハ前他塔外鈑ニ他ノ四弾ハ中甲板古
平砲門附近ニ命中シ孰レモ貫徹セズシテ其外側ニ炸発シタル
モノナリ従ッテ六尹以上備砲ニテ敵弾ノ攻撃ニ帰シタルハ砲鞍
耳ニ直接命中シ粉愛ケタル十番六尹砲一門ノミテ過ギザリト
雖モ外側炸裂ノ跳弾破片等ハ多ク砲身ヲ号数ノ微痕ヲ被
リ若クハ照準器砲具等ヲ毀損セラレタルモノ古尹砲古門ノ多キニ
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及ベリ敵ニシテ若シ我下瀬弾如キ強猛ナル高勢爆裂弾ヲ
使用セシモノトセバ我ガ備砲ハ六尹砲以上ノコトゴトク恐ラク半数以上ノ
廃砲ヲ見ルニ至リシト推察ニ難カラズ其他船体部ニ於テモ彼我其
位置ヲ換示トセバ其災害程度実ニ惨澹タルモノアリシヲ疑ハズ
将来建造兵ニ就テハ深ク海戦利艦ノ被害程度ヲ鑑ミ周
到ナル講究ヲ重ネテ高勢爆引弾ニ対スル船体岳号防禦ノ
充分改良刷新ヲ施スコト最モ緊要ナリトス各国ニ於テ高勢
爆裂弾ノ研究益々発達シタル暁ニ於テハ交戦未ダ幾何
ナラズシテ忽チ沈黙ニ帰スルガ如キ多数備砲アラムヨリ寧ロ少数
分ノ砲数ヲ減ズルモ砲身孔砲門ノ間隙ノ砲座ノ天蓋等其他
充分ノ防護ヲ施シ長ク交戦ニ堪フル兵装ヲ備フルヲ得策
トスルニ至ルベシ
二十五、今回ノ海戦ニ於テ敵装甲艦ガ砲弾ニ対シテ比較的ノ宏易ト
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沈没シタリシハ交戦距離比較的近クシテ我砲火ノ効果極メテ確
実偉大ナリシニ因ルヤ固ヨリ成リト雖モ敵艦ガ石炭其他ヲ過度ニ増
載シテ帯用水線以下ニ没シ居リト當日風波高カリシテ乾舷ノ較ヤ
低キ部ヲ穿タレ弾孔ハ著シク浸水ヲ媒ヲナセルコト帰スルヲ得（平
ガ如シ現ニ我艦唯ニ於ケルモ水線附近ノ被弾ニシテ浸水ノ多ク困難ヲ
感ジタルモノ甚ダ多カリシヲ以テ思ハバ将來ノ新戦艦トイフ甲板「デツキ」
甲鈑ヲ高后ニ拡張シ水線帯甲ノ上部ニ更ニ「コンプリートアーモア
ベルト」ヲ装着スルコト得策ニ非ザルカ然シテ我運力ノ彼ニ比シ概シテ
優速ナリシハ今回ノ海戦ニ於テ戦略裏戦術上至大ノ効果ヲ奏
シタルモノニシテ今后益々之ガ増進ヲ図ル必要アルヲ以テ速力ハ幾分ヲ
犠牲トシテ装甲ヲ充ツルガ如キハ断ジテ不可ナリ其辺ノ慶深考慮
ノ向有考慮ヲ切望ス
二十六、司令塔ニシテ海戦ノ災害ヲ被リシモ散シテ「フレサレウィッチ」「バーリャ
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テスヂビヤ」等貴重ナルモノニシテ我ニ於テモ今回ノ海戦ニ三笠、朝日、富士
日進、等孰レモ人員要具ニ多少ノ損傷ヲ被レリ之レ盖シ現時ノ
司令塔ガ恰モ弾片破片ノ吹溜所ガ如キ位置ニ設置セラレタル
ニ因ルモノニシテ必ズ改良ノ地（？）カラスザルモノ、ナリ
元来司令塔タルモノハ戦闘中主脳将校ガ其艦ヲ指揮操縦
スルヤ最良唯一ノ共令所トシテ設計セラレタルニ拘ハラズ今日
尚実戦ニ際シ艦長其他主務将校等ノ位置ニ関シテ区々トシテ
多少ノ議論ヲ所以ノモノ必竟スルニ司令塔ノ位置比較的的低キ
過グルコト展望ノ点ニ於テ較ヤ缺ク所アルガ為メニ外ナラズシテ耳
位置ヲ商低狭窄ノ便否ハ実際一艦ノ戦闘力発揚上少カラサル
関係ヲ有スルヲ以テナリ
砲火ノ指揮ハ指揮者ノ眼高大ナレバ大程有利ナリトイフ風ニ一
般ノ認ムル處ニシテ実戦ヲ経ルニ従ッテ益々其感ヲ深クスルニ近
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来英国ニ存テモ指揮者ノ位置ヲ上檣楼ニ撰定スベシトノ議論
アリト云フ盖シ所以アルナリ然レドモ其効果ノ指揮ニ関スル通信機関ノ
完全ナル具備ト相待タザルベカラザルガ故ニ造船上設計セラレタル指
揮者位置ヲ離レテ戦闘中任意ノ位置ヲ撰ブハ面白カラヌ多分ニ不
利不便ヲ見ルニ至ル「バトテ」現時ノ司令塔ヲ其儘ノ高サニイ・「リム」ト許
サレル所マデ努メテ鈑厚ヲ減ゼザル可ラズ然ルニ操艦ノ要スル諸機
関ナルモノ各種ノ砲弾ト對シ絶対的ノ防護ヲ必要アリテ新機
ハ周囲ノ回転行ハカラズノ微ト虽モ其破損ハ直チニ陣形紊乱ノ因
リナシテ戦分ノ不利ヲ醸スコトアリト信ズ「ツ」サレ叫（？）バ「コーリック」ノ
如キ舵機関ヲ其好例ナリ是ニ於テ高サニ従ッテ益々有利ナル指揮
指揮者ノ位置ト飽迄防護ヲ要スベキ操艦諸機関ノ位置トノ調和
ハ自カラ容易ナラズシテ其孰レカヲ取ルカ、譲歩ヲ見ルヤ全然後者
スルカ二者其一ヲ撰バザル可カラザルニ至ル
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今試ニ司令塔ニ就テ小官ノ考案ヲ陳フレバ左ノ如シ但シ等巡
洋艦以上ノ新造艦ニ対スルモノトス
現時ノ厚甲鈑司令塔ヲ廃シ中甲板「シタデル」甲鈑内ニ薄
甲鈑大形司令塔ヲ設ケ此処ニ舵輪其他操艦ニ要スル一切
ノ機関ヲ備ヘ高大ナル指揮ニ関スル諸機関ノ豫備装置ヲ設クル
ヲニシテ其大サハ適宜トシ甲鈑ノ厚サハ「シタデル」甲鈑ト相待テ
各種ノ砲弾ニ對シ絶対的ノ防護セラルルニ足ルヲ要ス其天蓋
甲鈑モ亦然リノ前檣下半部ヲ装甲檣トシ其頂真上司令
塔ヲ設ケ此処ニ「コンパス」測距離儀其他砲火指揮ニ関スル一切
ノ機関ヲ備フルモノニシテ下層司令塔上檣楼ノ各指揮塔ニ
通ズル傳話管ノ如キハ殊ニ大全ナルヲ要ス其ノ高サハ現
時ノ「コンパスブリッヂ」ヲ較ヤ高キヲ適當トシ其大サハ内径三
米突乃至三米突半位トス
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改良司令塔ノ圖
上層司令塔備具ノ装甲檣ノ厚サハ三吋乃至三吋半位ニテ
甲平来突内外ノ距離ニ於ケル六尹以下砲弾ト破片トヲ防護
スルニ足ルヲ要ス
（図）
「レンジファインダー」
上層司令塔 内径三米突乃至三米突半
装甲厚サ三吋乃至三吋半 高サハ今少シ低キ可ナリ
「レンジファインダー」
「コンパスブリッヂ」
「ブリッヂ」
「セルターデツキ」
上甲板
中甲板
下層司令塔
「シタデル甲鈑」
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測距儀ハ上層司令塔上部ニ装甲構内ニ二個ヲ常備
シ別ニ砲戦ト防護鈑ヲ有ス
別ニ日帝ノ航海用トシテ操艦ニ要スル機関ノ一部ヲ現時
如ク下層司令塔「ホイールハウス」前通リ可ン「ホイールハウス」ハ戦時
取除ク様設計スルモ可ナリ
前檣ノ装甲檣トハ全ク獨立セシムル形ノ手ヲ設クルモ可ナリ
右ハ昨年十月小官ハ八雲在職中堤出シタル意見ト基
偶々於テ同一ナルモ今回ノ海戦ニ於テ益ス其必要ヲ認メ
タルニ付微細ノ点ニ修正ヲ加エ更ニ提言セルモノトス
二十七、装甲鈑背后ニ於ケル充実セル石炭庫ハ防禦上極メテ
有効ナルヲ実証シタリ防禦甲板上ノ炭庫ハ中甲板ノ震
面迄毎ニ限ナリ石炭ヲ充実シ置クハ戦ニ臨ムノ準備トシテ特ニ
注意スベキ要件ノ一ナリトス
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二十八、弾片防禦用トシテ釣床「マントレット」等ノ有効ナルハ既ニ普ク
了知セラルヽ處ナリト雖モ今回ノ海戦ニ於テ其効果ノ実ニ驚ク可キ
モノアルヲ実証シタリ殊ニ艦橋ノ如キハ背后砲塔廓ノ損
揮塔空隙ノ側背等ニ使用シタル釣床ノ如キハ孰レモ多少ノ破炸裂
片ヲ喰止メ明カニ人員砲具等ヲ防護シ得タル実跡ヲ留メタリ
檣中部ノ周囲ニ保縛シタル釣床及ビ司令塔ノ周囲ヲ巻キタル
索具ノ如キハ亦多数ノ破片弾片ヲ喰止メ大ニ其散乱ヲ防
阻スルヲ認ム「マントレット」ハ釣床ニ比スレバ少シト考ル處アリト雖モ
依然有効ナリトス
二十九、十二尹砲塔ノ自働照準装置ハ全ク精巧ヲ失シ往々歪ヲ生ジ易
キ虞アリ直接式ニ改良ヲ要ス尚砲塔砲ト照準畠改装着ヲ
必要トスルハ今ヤ一般ノ認ムル處ニシテ其位置ハ無障畳ト相応ノ設
備ヲ要ス
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三十、今回海戦ニ「ボロジノ」型戦艦ガ砲弾ニ對シテ比較的脆カリス及レ
「クニャージスワロフ」ガ幾多ノ魚雷攻撃ヲ被リシニ拘ハラズ（魚雷ノ幾発
ガ命中シタリシヤハ固ヨリ不明ナルニ拘ラズ）運動ノ自由ヲ失セザルモノニ対シ
孰レ近距離ヨリ発射シタルヲ以テ割合ニ多数ノ命中アリシト推
得ベシ）沈没ニ容易ナラザリシハ此同型艦特色タル水線下裏面
ノ特製甲鈑ガ預テ期シカラザル効果アリシニ由ルニ非ザルカ兎ニ角戦本
艦「アリョー（？）ル」ニ就キ充分装甲法ヲ講究シ新艦防禦上ノ参考
ニ資スルコト目下ノ急務ナリ
三十一、十二尹砲発射ノ際ヒ砲塔ノ検校室及其弾庫ニ在ル者ハ
其激動ノ脆弱ナル射弾ノ徹甲弾ナルカ鍛鋼弾ナルカヲ容易ニ
区別シ得リシト云フ思フニ両者其弾壁ノ硬軟ニヨリ膅面ニ
摩擦スルノ度ニ強弱アルガ為ニ非ザルカ膅内作用ノ参考ニ資ス
ルニ足ルヤラ思ヒ暫ラ茲ニ附記ス
畢
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明治三十八年六月二十日
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敵弾ニ対スル防禦ニツキ
本回ノ海戦ノ結果本艦船体防禦ニ関シ得タル一二ノ卑見ヲ
開陳セントス
一、舷側中央大手甲鉄鈑（「ショアレー」ノバンド）以上中央砲台
本艦ニ於テ舷側中央部ノ甲鉄帯ハ「ショアレー」ノ「バンド」以上中央砲台
ノ部ハ厚サ大ニシテハ最厚九尹甲鉄帯ハ「ショアレー」ノ「バンド」
以下ニ装備シアリテ戦時軍需品石炭等満載我ハ片其水準
線ハ其「バンド」上没スルニ至ルヲ以テ水準線以上敵弾ニ暴露
スルモノ之ノ大手甲鉄帯ナリタル（？）
本回ノ海戦ニ於テ敵弾水線下ニ命中スルモ多ク水線附止大手
鉄帯ハ十二尹敵弾ノ打撃ヲ受ケルモノ三個所アリテ其三ハ何レ
ハ「ショアレー」ノ「バンド」ヨリ約一米突余ノ高サニ於テ見事ニ直径
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約七〇〇乃至一〇〇〇ミリニ連スル大破孔ヲ生ジ其一弾ノ如キハ下甲板ハ
（外鈑外ヨリ其厚サ約十五呎ノ深サス）貝ノ破壊ヲ及ボス七ノ
尚他ノ一弾ハ大手砲々郭砲門下縁ヲ打チタルヲ以テ其作用
前二者ノ如クナラザルモ砲門下縁甲鉄帯ハ長キ亀裂ヲ
生ゼシムルニ至レリ当時敵ノ距離ヲ綜合スルニ約五千米突余
ニシテ勿論以射距離ニ於テ十二尹弾ノ敵甲穿力ハ大手鉄帯
ノ能ク之レニ抗スベキニ非ズト雖モ貝敵弾ノ打撃後ノ甲鉄鈑
ノ状態ヲ考フルニ全ク鉄帯ヲ貫徹セルモノアラズ敵弾ハ外鈑
面ヲ打撃シテ茲ニ非常ナル圧迫ヲ與ヘ遂ニ鉄面ノ一部ヲ凹形
ニ内方ニ欠損セシムルニ至リ弾丸ハ又タ炸裂シ死々トナリ弾頭ハ
尚其余勢ヲ以テ内部ニ突入シ炸裂ノ全波又ハ内部ヲ侵
シテ甲鉄片ト弾片ノ一部ハ内部ノ構造ヲ破壊スルニ至リタル
モノナリ（甲鉄片ト弾頭トノ内部ニ発見ス）而メ均ノ内部右度
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庫ノ充実セルハ大イニ其破壊力ヲ減殺セルヲ知レリ故ノ大手
甲鉄ノ破孔及破孔ノ状態ニ平津鉄鈑其物ノ物質的ノ組
織ニツキテハ大イニ診査ヲ要スベキモノアルベシト雖（昨年八月十日ノ海戦
ニ於テ約七千米突余ノ射距離ニ於テ敵ノ十二尹弾ハ能ク本艦ノ水線部
七尹甲鉄帯ヲ打撃シテ破孔ヲ生ゼリ）水線上敵弾ニ暴露
スル重要部ノ鉄帯ハ「ショアレー」ノ「バンド」以上其以下ノモノト全ク高サ
二米突許（中甲板中央砲台甲板迄）中甲板ニ達スル迄高カーセバ
其防禦上ノ効果著大ニシテ或ハ今回ノ如キ損害ナカリシヲ知ル
（蓋シ本艦ノ如キ中央大手外鈑ノ吾後端下方内部ニ石炭庫
充実スルヲ得ザル「ウイング」ニシテ防禦部ノ中モ亦比較的薄キ
外鈑以テヨリ十五呎内存リ）構造ノモノアリス大イニ顧慮スベキ
事ナリトス
二、大手砲々郭ノ天井鉄鈑
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此鉄鈑ハ或ル角度ヲ有スル敵弾ニ対シテハ適當ニ厚サヲ有
スル鉄材ヲ以テ構造スベキ事ハ已ニ歴戦者ノ唱道セル処ニシテ
今回ノ海戦ニ於テ本艦ノ上甲板六尹砲々郭ノ天井ノ如キハ其
余リ薄弱ナルヲ証セリ即右舷後部砲廓天井ニ一弾左後
部砲廓天井ニ一弾何レモ其弾着ノ打撃ヲ受ケタリシニ其
結果ハ為メニ砲員ノ殆ンド全部ヲ傷ツ一時砲火ノ切力ヲ減殺
スルノ已ムヲ得ザルニ至レリ該天井ノ鉄鈑ノ如キハ約五分許
ノ厚サヲ有スルモノニシテ仮令ハ小口径砲弾ニ対シテモ其抵抗力ノ
微ナル言ヲ俟タズ盖シ此ノ鉄鈑ニシテ少クモ一吋許ノ厚サヲ
有シタリトセバ（厚サヲ増サザルモ適宜ノ間隔ヲ以テ二重ノ天井トナスモ可
ナランカ）或ハ廓内ニ危害ヲ及ボス事ナカリシカ昨年以来ノ
海戦ニ徴スルモ本回ノ海戦ニ鑑ミルモ是砲戦距離ノ延長
シテ遠戦敵時ニ亙ル事アリ重要ナル諸所ノ天蓋ニ対スル
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防禦トシテ薄弱ナル鉄鈑ハ其危害過大ナルヲ認ム宜シク
適當ノ防禦ハ緊要ノ事ナリト信ズ
三、中甲板大手砲々郭ノ「スカイライト」
本艦ノ中甲板大手砲々郭ハ其四方天井ニ方形ノ「スカイライト」ヲ
設ケ上甲板ニ稍高キ其「コーミング」ヲ有ス而メ坎「スカイライト」ハ
六弾片等侵入ヲ防グ為メ「アーモアプレート」ヲ以テ装置シ戦闘ノ
際ハ尚之ガ鉄蓋ヲ閉塞スベキナリ令回戦備トシテ此内部ニハ
「ロールステーション」等ノ「グレーチング」ニ添フラ格子上ニ見定ヲ補ヒシガ
大手敵弾ノ上甲板舷側外鈑ヲ貫通セルモノ坎「スカイライト」ニ達ス
ニ及デ炸裂シ其破片木片ト相混ジテ砲廓内ニ飛込ミ砲員ヲ
傷ツルニ至レリ究竟妙構造物ナルヤ平時ニ於テハ幾分カ臭
員ノ生流上便利ナルベト虽ナント虽亦不便ナル事ト況ンヤ
戦闘ノ際シテ之ヲ充分閉セザルベカラザルモノニシテ且ツ垂上ノ如キ
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危害ヲ與ヘルモノナルハ防禦上之ヲ廃スニ若ガズ随ッテ上甲板
「グレー」シテ砲郭ノ天蓋ヲ強ムル一弾ナルベシ通風気筒トシテハ
小形気筒ヲ設置セバ可ナリト考慮ヲ要ス
四、防禦ナキ又ハ防禦薄弱ナル通気筒、防禦
今回ノ戦闘ニ於テモ防禦ナキ又ハ防禦ノ薄弱ナル重要部
ニ釣床ヲ以テスル防禦及木材（サーミトレフト？）ノ防禦ハ其効果
顕著ナルモノニシテ昨年ノ海戦ニ於テモ其防禦ノ奏効結果
ハ已ニ一般ノ認識スル所ナリ然レドモ重要ナル場所ニ於テハ
出来得ル限リ「クリヤー」ニシテ不必要ノ諸材料器具物品
等ナキヲ要スルハ亦防禦ノ一法ナリトス
防水ニツキ
一、防水蓋防水扉
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本回ノ海戦ニ於テ防水蓋扉ニ関シテ特別ニ記スベキ事ナシト
雖防禦ノ一法トシテ大イニ注意スベキモノアリ特ニ面積ノ廣キ且ツ
薄ギ防水蓋ニ至リテハ普通ノ閉鎖法ニテハ事変負上其功ナキ
モノト認ム故ニ戦闘前ニ於テ必要ナキ場所ノモノハ尽ク之レヲ
閉鎖シ何レ適宜堅牢ナル木材ノ支柱ヲ以テ之ヲ支持
密着シ置クノ複防装置スルニ非ラザレバ戦後ノ之ヲ開閉スルノ
装置トシテ種々ノ場合ニ於テ震動激動ノ為メ自然
其付ヶ根ニ於テ狂ヒヲ生ジ事ニ臨ミテ其効ヲ失フ事
アリ平素ノ保存手入ハ勿論ナリト虽一雷確実ナル方法
ヲ採ルベキヲ可トス加之必要上危害ヲ及ボシ開放シオカザル
ヲ得ザルモノアルベキヲ以テ防水蓋ハ尽ク「マンホール」ヲ設ケ
クレヲ出入口トセバ條メ其蓋ハ密閉シ置ク事ヲ得ラ有
利ナルベシ
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戦後部大手甲鉄隅壁二元開閉扉ニ就キテハ今回ノ
海戦ニ於テ大イニ注意スベキモノアルヲ認ム本艦ニアリテハ
此開閉扉ハ中甲板ニ於テ左右両側ニアリト雖下甲板ニ於
テハ左舷側ニノミ之レヲ有スルヲ以テ中甲板ハ非戦闘側ノ
モノヲ開キ置キ戦後部ノ交角ヲ便ナラシムルヲ得レドモ
下甲板ニ至リテハ戦闘側上虽交角ノ為メ之レヲ開キ
置クノ必要アリ令面比付ヶ后部ハ敵弾ノ炸裂衣ニ際シ
其間隙ヲ経テ多数ノ彼瓦木片ト混ジ中央防禦区画
ニ飛込ミ之レガアリ幸ニシテ他ニ危害ヲ及ボス事ナカリシモ若
若シ敵弾ノ貫通セシ時ノ如キハ全ク閉塞ヒアリタルガ為メニ
防禦区画ノ甚ダ少ノ害ヲモ及ボス事ナカリシ故ニ下甲板
アリテモ中甲板ノ如ク両舷ニ其開閉扉ヲ有スルヲ得バ
交角ヲ遮断スルノ不利ナケレバ常ニ戦闘側ノモノハ
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之ヲ閉塞シ置クヲ得ルノ利アリト信ズ
二、水線下ニ於ケル大ナル「コンパートメント」外鈑
本艦ノ巻揚（？）鋪機室戦後排水畜室、操舵機室ノ
如キ水線下二元大ナル区劃ノ舷側外鈑ハ唯ダ一重ノ
鉄鈑角ヒ別ニ防禦ヲ施サレヲ以テ不幸ニシテ敵弾
ノ破孔ヲ生ズルアレバ（見聞タル所ニヨレバ敵艦ノ為メ水線
下外鈑ニ凹損ヲ生ゼシモノアリ）危険之ニカラズ当水書ノ
爆発ニ対シテ亦然リ故ニ此区劃ノ外鈑ハ二重ノ外装
置（二重底ノ如ク）ヲ有セシメバ右等ノ危害ニ対スル防
禦トシテ有効ナルベシト信ズ
三、送風管閉塞弁
各区劃諸倉庫等ニ通ズル送風管及排気管ハ
各其区劃ニ於テ開閉弁ヲ有シ互ニ交通ヲ遮断用
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放スルヲ得故ニ不幸ニシテ艦内ニ浸水アルハ防水扉防水蓋ノ外
之ガ弁ハ之ヲ閉塞セザルベカラズ然ルニ本艦ノ其装置ニ於テ
各弾薬庫ニ装備セルモノハ自動閉塞弁アリテ庫外ヨリ之ヲ開
置トシテ手動閉塞弁アリテ庫外ヨリ之ヲ開閉スルヲ得テ
確実有利ノモノナリ然ルニ其他ノモノニアリテハ惣テ自動閉
塞弁ノミナルヲ以テ或ハ位置ノモノハ臨機咄嗟ノ際手ヲ
下スニ困難スルヲ得ベシト虽下甲板下層又ハ倉庫内等ニアル
モノハ自動閉塞弁気ノ外急ニ応ズル事能ハズ之レ大
患之キ事トシテ経験ニヨルニ自動閉塞弁ハ平素良善ノ
状態ニアリトモ往々ニシテ其働きヲナサザル事アリ危急ノ際
最早及ブ能ハザルベク庫薬庫ノモノノ如ク複装置トシテ閉
塞ヲ確実ニスベキ構造ハ向後ノ利益ト信ズ
四、防水器具
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海戦際敵弾ノ為メ水線下ニ破孔ヲ生ジ海水侵入スルノ
不幸ニ際シテハ兼テ計劃ノ排水法及充水法ヲ攻究シ
置クノ必要アリト虽先ヅ第一着トシテ防水器具ヲ用ヒテ
侵入海水ヲ防止セザレバ其効ナシ而テ其防水器具トシテハ
防水布及弾孔塞栓ノ備付アルモ急ニ臨ミテ未ダ其効
果ノ充分ナルヲ認メズ防水席ハ其扱ヒニ多クノ時ト人トヲ要シ
加之高速力航走ノ中ハ益困難ヲ感ズベシ弾孔塞栓ノ如キハ
現時備付ノ「マートレラス」ハ之レト虽弾孔栓ナルモ其構造稍薄
弱ノ嫌アリ而メ其作用水線下ノ破孔ニ「マツ」スルハ構造上
真効ヲナサズ本艦ハ兼テ其他ニ防水用木板ヲ特製シ
此回ノ海戦（昨年ノ海戦ニモ使用セリ）ニ於テ水線附近ノ被弾
破孔ニ対シ使用シテ能ク其効果アリタリト虽坎ノ木板
水線下ノ破孔ニ対シテ応急作業トシテハ甚ダ困難ナルヲ
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又時ヲ費スノ恐レアリ
斯ク如クナルヲ以テ向後適当ノ防水器具ニシテ艦ノ内部ヨリ
破孔ノ水線上下ニ拘ハラズ咄嗟ノ間ニ能ク其損傷ヲ閉塞シ
テ遺憾ナキ便利ナルモノノ発明アラバ其効果盖シ偉大ナ
ルベシ
右依命卑見提出候也
明治三十八年六月 日
海軍少佐 加藤雄次郎
三笠艦長 伊地知彦次郎 殿
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船體兵器改良意見
一、安式十二尹砲ハ尚一層強堅ナラシムルヲ
昨年海戦以来十二尹砲ノ損傷セルモノ数ヲ少シ結果或ハ弾丸
ノ信管ノ改造迄種々ノ試験ヲ實行シテ其安全ナルヲ
確メラレタルカ如シト虽尚本艦ニ於テハ安全上ニ完全ニ堅牢
ノ上ニ堅牢ナルヲ希ヒ諸種ノ工夫ヲ凝ラシテ発砲中極力内
外ヨリ砲身熱ヲ冷却スルノ方法ヲ講ジタリシニモ拘ラズ五月二十
七日海戦ニ於テ再ビ之ヲ損傷スルノ不幸ヲ醸セリ其原因ノ
如何邊ニ存スルヤハ未ダ判然セズト虽要スルニ砲身ノ脆弱
ナルハ多数ノ人ノ認ムル所ナルガ如シ殊ニ損傷ノ個處ノ多ク鋼線ト
鋼環ノ接合部附近ニアルヲ見レバ或ハ抗圧力ノ増大ナラシメンガ
為ニ採用セラレタル鋼線環ノ構成ハ他鋼環等ノ関係適良
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ナラズシテ反ッテ砲身ヲ弱ムルノ主因トナルガ（？）疑ナシトセズ苟モ
海戦ノ運命ヲ決スル最緊要ナル巨砲ノ命数如斯キ不確
實ノモノナラバ将来ノ為メ最モ痛心ニ至リテ堪ヘズ充分
攻究ヲ盡クシテ速カニ改造セザルベカラザルナリ
損傷セル本艦ノ十二尹砲ハ最初古ガ乃至三千ノ距離ニテ鍛鋼
榴弾十数個ヲ発射シ克ク後一発砲口附近ニ於テ早発シタル
ガ如キ形跡アリシヲ以テ直チニ膅中ヲ検セシモ異状ナカリシ後
鍛鋼榴弾数個徹甲榴弾七個ヲ発射シ最後ニ二十八発目
ニ巨萬六千ノ鍛鋼榴弾ヲ発射セル際此不幸ノ祟起セリ
而シテ弾丸ハ滯リナク射出セシモ砲身退却ノ度僅カニ五糎米
突少ナク兜環及其後方鋼環ノ一部破壊飛散シ鋼線ノ
前部ヲ亦切断奔跳シ互ニ止マリ内筒ハ破損スルモノノ如ク又尾栓
ハ約二糎米突後退シテ如何ナル手段ヲ盡スモ之ヲ抜出スル能ハザ
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リシヲ以テ之見レバ必ズヤ弾丸射出ト共ニ非常ノ壓力ノ後方ニ
加ハリタル予知ルニ足レリ殊ニ射出際膅面ニ大ナル拭物アリシヲ
証スルニ足ル之カ顔フニ先チノ早発ト認メタル弾ヲ射出ノ際膅中
缺損ノ起シテ居後連続ノ発射の為メ次第ニ之ヲ大ナラシメ遂ニ
此結果ヲ生ジタリトアラサルヤ或ハ弾丸ノ導環等ノ欠良アリシ為メナラ
ザルヤノ疑モ亦未ダ去ラズ而シテ前後四時間内ニ二十八個ヲ発射シタル
予ナリ之テ其速度ハ八分平均時ニ一弾ノ発射シタル比例ナル過ギ
ズ況ンヤ毎発五古听ノ淡水ヲ使用シテ膅中ヲ冷却シ尚絶ヘズ海水
ヲ以テ砲身外部ヲ冷却セシメタルニ於テヲヤ決シテ砲身ノ過度ニ熱
スル理由ナク又實際之ナカリシヲ認メタリ要スルニ損傷ノ原因如何
何ニ関セズ砲身ノ構成ヲ尚一層強堅ニシ併セテ鋼線ノ使用
ニ充分研究ヲ要スベキモノト認ム
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二、膅中冷却機動唧筒及野水函ノ装砲室内ニ設クルコト
巨砲命数ヲ維持スル良法之ヲ云フモ又命中公算ヲ大ナラシムル
点ヨリスルモ連続射撃中大砲ヲシテ常ニ「クール」「デグリー」ニ最モ
近キ状態ニ保タシムルハ甚ダ緊要ナルヲ感ゼシムパアラス而シテ
之ヲ為スニハ盖シ毎発多量ノ水ヲ以テ膅中ヲ冷却スルニ勝レル
モノナカルベシ是レヲ以テ従来ノ手働唧筒ニ代フルニ水壓力利用
之ニ依テ働作セル機動唧筒及余積ノ許ス限リ大形ナル貯
水函ヲ装砲室内ニ設ケ少時間ニ多量ノ水ヲ送リテ膅中ヲ冷
却スルノ方法ヲ採センコトヲ切望ス
三、司令塔ノ位置及構造改良
開戦以来ノ實績ニ鑑ミ司令塔ノ従来ノ構造ハ他ニ厄性格
ヲ備ヘシザルベカラズト思考ス
(イ) 死角大ナル障害ニ対シテ天井ノ防禦
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四、附近ノ炸裂光弾片ノ防禦
(ハ)ノ目的ヲ達センニハ一天蓋ノ宣サヲ増スノ外他ニ方法ナキガ如ク見
思ハレ上分鋼鈑ヲ使用セザルベカラズ盖シ煙砲弾丸ノ進歩ハ将来
益々弾道ヲシテ平低ナラシムベシト虽是レト同時ニ必ズ遠戦ニ
傾クベキヲ以テ其落角ハ依然現今ノ状態ニ止ルベシト見做サザル
ベカラザルナリ
(ロ)ノ目的ヲ達セント示第一司令塔ノ位置ヲシテ附近ノ建物ヨリ可及
的遠隔セシメ第二周囲ノ開口ヲ狭少ニシ且ツ之ヲシテ特種ノ形状トシ
南北飛ビ来レル弾片ノ抑止ニ得ルガ如キ装置ヲ施サザルベカラズ苟
シモ此目的ニシテ達セラレズバ司令塔ハ効力ノ大半ハ滅却セラレタルト
云ハザルヲ得ズ唯ダニ前橋下ノ両側ニ各一個宛ノ司令塔ヲ設
ケテ此目的ヲ殆ント達セラルベシト虽唯只之ニ伴フ諸種ノ不便ハ
免レズ是ヲ以テ若シ司令塔ノ位置ヲ固ヨリ前方ニ進メ附近
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建造物ト遠ザカラシムルト同時ニ之ヲ楕円形トシ依テ其容積
ヲ大ナラシムルニ比シ側方ヨリ標的ノ面ヲ少ナラシメ且ツ其開
口部ヲ亦同如キ形状トナシテ尚ホ之ヲ狭少ニシ又斜ニ飛ビ来
ル弾片ニ対シテハ釣床索條或ハ帆布ノ束條等ヲ充分峡部
ニ繋止使用シテ以テ之ヲ抑止シ得ルガ如キ方法ヲ採ラザル可カラザルカ
略図
（図）
釣床類
索條ノ如キモノ
司令塔断面図
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平面図
（図）
探照信通防
前橋
船橋
前砲塔
司令塔
板甲上
側面図
（図）
前橋
船橋
昇降ラッタル
及デールエピン
ウイルハウス
司令塔
板甲上
塔砲前
セルターデツキ
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盖シ従来古尹砲如キ兵器ニシテ尚且ツ充分ノ防禦ヲ施スノ必
要ヲ見今日数十門ヲ見ル砲火ノ指揮者其他重要ノ配置ニアル
諸部員殊ニ一艦ノ主脳者ヲ最モ安全ニ防禦スルハ必須ナル
敵テ喋々ノ要セズ況ンヤ一艦隊若クハ全艦隊ヲ統率スル最高
指揮者及其屬僚ニ於テヲヤ是レ又将来ノ海戦ハ今日ヲ以テ
推スベカラザル強敵ヲ敵トスルノ覚悟ヲ要ス依テ伴フ苦戦ノ状
シテ思ハザルベカラズトセバ重要ナル指揮者ハ重要ナル船内交通機
関ト共ニ不全ナル防禦内ニアリ得ル如ク苦心セザルベカラズ固ヨリ司令
塔ノ位置構造ニ充分ノ改良ヲ施サレントヲ望ム
尚図ノ如ク司令塔ノ船橋ノ両側ニ及セルターデツキ」ヲ遠サクルトキハ前
述ノ利益アルノ外展望ヲ良好ナラシメ且ツ主砲ノ射角ヲシテ増大
ナルムケ利益アリ或ハ敵ノ良好照準点ヲ与フルヤレト云フモノ
アレトモ従来船橋ヲ照準セシムルト大差ナリ多ク顧慮スルノ
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要ナシト思料ス
四、無線電信室位置及防禦
無線電信ハ当戦役ノ偉大ノ功績アリシト言フヲ須ンズ是レヲ以テ其
垂直線及ビ電信室ノ防禦ニ就キテハ深ク攻究ヲ要スベキモノト思考
ス惟フニ垂直線ハ前後両橋ニ之ヲ備ヘ尚豫備品ヲ用意スルノ
他ニ方法ナシトスルモ電信室ノ防禦ニ関シテハ或ハ一層其位置ヲ
下方ニ移シテ防禦力ヲ増スか或ハ前述セル司令塔直下防禦内ニ
置キ以テ側方及上方ヨリ来ル弾丸ヲ防グ得ル如クセバ可ナラズヤ去ル
五月二十七日海戦ニ於テ本艦ノ中甲板電信室ニ近々敵弾ノ炸裂シ
タルガ如キ甚ダ危険ニ瀕シタリト覚ユ
五、「ファンネル、ケーシング」ノ防禦
軍艦ガ敵弾ニ依テ間接ノ致命傷ヲ受ケ易キ一場所ハ「ファンネル、ケー
シング」附近ニアルベシ盖シ速力ノ減少遂ニ撃沈セラルヽノ基ト
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ナルベケレバナリ之ヲ以テ此部ノ防禦モ亦決シテ等閑ニ所スベカラズ惟
フニ厚鈑ノ使用ハ方向ヨリ制限尺ギヲ以テ彼ノ「ニコラ」一世ニ就テ
見タルガ如ク錨鎖ヲ其周囲ニ捲キ之ヲ堅固ニ繋止シテ以テ防
禦ノ一助トシ得ベキカ
六、大尹砲各指揮塔改造
該指揮塔ノ動カハ五月二七日ノ海戦之ヲ証シ得ラ余リアリト言フベシ
然レドモ尚多少ノ欠点ナシトセズ若シ需ヲ行フ計畫セラルヽ図ノ如キ
形状トシ更ニ一層其効力ヲ増スベシト思考ス譬ヘバ前後十二
尹砲ガ極度附近ニ旋回シテ發射スル際其瓦斯壓迫ノ為メ
甚ダシク砲火ノ指揮ヲ妨害セラルルガ如キ又弾片ノ侵入ヲ可及的
少ナカラシメントスル点ヨリスルモ前後及内方ノ開口ハ全ク之レキ
シ可トス
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指揮塔断面
（図）
蓋天
内円
ケースメート
側鈑
内方
ギヤドデツキ
七、「ケースメート」天井及甲板ノ防禦力ヲ増ス事
司令塔改良ノ部ニ於テ述べタルガ如ク譬ヒ将来弾道ノ平低ナル
ニ至ルベキヲ豫想スルニ決シテ大落角弾丸ニ対スル防禦ヲ等閑
ニ附スベカラズ殊ニ甲板「ケースメート」天井ノ如キ大ニ之レガ防禦法ヲ
講ゼズンバ「ケースメート」ノ効力ハ其過半ヲ失フニ至ラン五月二十七日ノ
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海戦ハ充分之ヲ証セントスルファク此等ニ少クモ三四吋ノ鋼鈑ヲ使用セザ
ルベカラズト思惟ス若シ一艦ノ重量ニ制限アラバ一二門ノ煩砲ヲ
犠牲ニ供シ其重量ヲ此向ニ使用スルモ尚結局ノ効果大ナル
ベシ又防禦甲板ノ如キ甚中央部ノ厚サヲ減ズルモ其両側部
ノ厚サヲ増加スルノ必要アリ尚中甲板「ケースメート」ノ天井ニ当ル
甲板ノ厚サモ事情許ス限リ之ヲ増スノ必要アリト認ム
八、両橋ノ必要
開戦以来ノ實驗ニ依リテハ旧「清」ツラ一橋説ニ賛同シ得ラアリシモ
尚熟ラ考フルニ二橋ヲ一橋ニ減ジテ得ル主要ノ利益ハ標的ノ面ノ
一ヲ下サシムルモ望モ少ナシトノ問題ニ属スル利益ハ多クノ場
合ヲ集メテ始ラ見ルヲ得ベク或ハ一萬射ノ第一弾ヲ以テ早クモ隊
備ナキ唯一ノ橋ノ破砕セラルヽノ事ナキヲ保ベズ夫ノ無線電信ノ
効力ヲ頼ラザルベカラザル現今若シ将来ノ海戦ト雖必ズ両橋ノ必要ヲ
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認メザルベカラザルナリ
九、釣床扁平「マット」及「ト」字型砕片ノ防禦スル効力ハ今毫モ疑ヲ挟
ムノ余地ナシ唯船内ノ釣床及需條ヲ自カラ制限アリテ必要ナル
個處之レガ使用ヲ恣ニ充施シカヌル屡々遺憾トセル所ナリ惟
フニ平時ヨリ之レガ材料ニ供シ得ベキ廃物ヲ集メ若クハ新調
シテ陸上倉庫等ニ貯ヘ置キ臨戦準備ニ於テ各艦ニ配
領スルガ如クセバ可ナラスヤ而シテ我下瀬弾ノ妙容易ニ大
災ヲ起サシムルモ之ニ対シテモ尚相當ノ抵抗力ヲ有スル材料ヲ撰ミ
且ッ艦艇ニ於テモ防禦位置ニ供ヘ元後海水ヲ以テ之ヲ濕潤
スルノ方法ヲ講究等深ク之レガ準備ヲ尽サザルベカラズト思料ス
十、鍛鋼榴弾ハ長キニ過ギザルヤ
遠距離ニ射出セラレタル我皇砲ノ鍛鋼榴弾ハ往々顛倒シツヽ
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飛行シ遂ニ目的物命中スルモ炸発セザリアリトハ曾テ耳ニ免
ル所ナリシガ五月二七日ノ海戦ノ捕虜ノナリタル敵ノ一砲術将校ハ全海
戦ノ降約古个ノ巨禹ニシテ尚此現象アルヲ認メ此状態ニシテ飛
ビ来ル弾丸ハ一旦命中セバ炸裂スルヲ確カナルモ斯クノ如クシバ
命中公算ヲ減ズル點ニナルヤ否ヤトノ言フ蓋シ遠巨禹
ニ至ルニ従ヒ弾体ノ弾頭ヲ支点トシテ旋回動ヲナシテ飛行ス
ベキヲ或ハ之ヲ認ム斯ク言フテヲナタルヤモ知ルヤ無キモ弾丸ノ長
如キ未ダ當局試験セラレタルアルヲ聞カズ是レヲ以テ改良増
歩ニ考ヒ適当ノ方法ヲ以テ此等ノ實驗ヲ亦施行セラレンコトヲ
望ム
十一、土露天砲弾丸大集格納所ノ防禦
砲側ノ準備ハ軽砲弾丸庫又ハ其附近ニ敵弾命中スルヤ同時ニ
其弾火薬ヲ自発セシメ危害ヲシテ一層増大ナラシメタル例少ナカラ
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五月二十七日ノ海戦ニ於テ本艦「ボートデキ」上十二听砲側ニ備ヘタル砲用
十発ノ弾火薬ハ亦三番「ケースメート」上ニ命中セル敵弾ノ為メ此運命
ニ陥リ全ク自發飛散シテ残ト苦痕跡ヲ止メザル附近ノ損害為
ミニ一層ノ悲惨ヲ極メタルガ然ント全所ノ側方要具函格納
的ノ収メタル十発ノ該砲用弾丸ハ此格納所ノ大半破壊セラレタルニ
テ偶々依然トシテ安全ナルヲ得タリ即チ知ル多少ノ防禦ヲ尚之ヲ
保護シ得タリ而テ之ヲ以テ準備弾丸集ノ為メ相當ノ防禦充格納
所ヲ舷側ニ接シテ設置シ内方ノ扉ヲ附シ之ヨリ弾火薬ヲ出納
シ得ル如クセシムルカ或ハ甲板出土方ニ於テ如キ砲後甲板ニ小口ヲ穿チ
先ツ弾丸薬ヲ中甲板ニ上ゲ是レヲ一々其小口ヲ通ジテ砲後ニ配給
スルガ如ク其可ナラザルヤ
畢
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右卑見命ニヨリ提出仕候也
明治三十八年六月二十日
海軍大尉 鈴木乙兎 (印)
三笠艦長 海軍大佐 伊地知彦次郎 殿
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日本海々戦ニ於テ得タル意見
一、前後砲塔ノ通信連絡
従来是具ノ必要ヲ感ゼシガ今回実戦ニヨリ特ニ其急ヲミス可
ラザルヲ知リ則チ大径傳話管ヲ以テ直接両砲
塔ヲ連絡シ通ズルバ距離苗頭ノ修正其他ニ於テ著
シ便益アリナラザルカ如シ
二、将校斥候塔
実戦ヲ経テ砲塔ニ於ケル将校斥候塔ハ左右両照準
台ニ最モ近キヲ可トス蓋シ射手ノ監督上係リ之レト
気脈ヲ通ズル上ニ於テ得タリ又号令命令等ヲ下ス上ニ
於テ宜最モ肝要ト見ルナリ
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三、距離通報器ノ位置
砲塔内ニ於ケル距離通報器ハ砲台長附属ノ伝令者
ガ明瞭ニ認識シ得ル位置ニ備フルヲ要ス実戦中特
ニ砲員ヲ指定シテ之レニ注意ヲ命ズルガ如キハ彼
兵員ノ不経済使役ノ意味ニ止ラズ殊ニ其指示ス
ル所ハ屢々甲板上ニ於ケル伝令者ノ早ク令ヲ遅延スル
屢々タリヲ以テ号令ノ混雑ヲ来ス基トナル
四、照準各部ノ予備品
照準機械ノ各部ハ現ニ豫備品トシテアル又然ラザルモノアリト
雖モ其砲塔外ニ顕ハレタル部分ハ弾片破片等ヨリ起ル
損害実際勘ナラザル可キヲ以テ各部皆對シテモ一揃
宛ノ豫備品ヲ要ス
五、徹甲及鍛鋼両種弾ノ激動ニツキ
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黄海ノ際シ徹甲弾ニ於テハ普通般鋼弾ニ於テ
セシヨリモ幾多大ナル激動ヲ感ジ且ツ叉互ニ之ヲ発射
セン際ノ如キハ洋庫ノ左右ヲ以テ之ヲ識別シ得ルニヨリ
其尾固ヨリ詳ナラザルヲ研究ヲ要スルモノト認ム
六、ワイヤガジニ就キ
八月十日黄海々戦及今回ノ日本海々戦ニ於テ「ワイヤガジ」
ノ命数ニ大ニ疑フベキモノニ至リト信ズ今後研究ヲ
要スル一個條ナランカ
七、伝話管ノ大キサニ就キ
砲塔内ニ於ケル傳話管ハ激動ノ水壓管内ノ音聲ト相
俟テ静謐ナル時間絶無トイフ故ニ現ニ存スル将校斥
候塔ヨリ左右照準台ニ至ルノ傳話管ノ如キハ全ク
其用ニ堪エザルヲ見タリ即チ直径ノ一層大ナルヲ要スル
Page 65
所トス
八、砲塔上「グレーチング」ニ就キ
今回ノ実戦ニ於テ重傷ノ之ヲ堅固ニセリ説リ唯ダヨリ
ハヲ見タリ砲弾ノ容易ニ上甲板（「ケースメート」上）天井ヲ
貫徹セシ鑑ミテ蓋シ思ヒ半バ過グルモノアラン
九、弾丸ノ長サニ就キ
九、弾丸ノ長サニ就キ
捕虜将校ノ確言スル所ニ依レバ我十二尹砲用鍛鋼榴
弾（？ノ免角四径ノ弾丸ト称セリ）ハ七千米突以上ノ
距離ニ在リテハ已ニ轉々不規則ナル弾道ヲ畫キツヽ飛
行スト言フ其命中公算ヲ減ズル著シキヲ思フニ蓋シ
研究ヲ要スルモノナラン
十、下瀬火薬ニツキ
下瀬火薬ハ既ニ露国ニ於テ分析セラレタルモノト覚悟ス
Page 66
ベキヲ至当トス而シテ全火薬ハ其燃焼力極メテ劇烈ニタリ
スデ次回ノ海戦迄ニ之レガ防禦法ヲ講ゼザル可カラズ
「ドンスコイ」乗組一将校ノ語ル所ニ依レバ今回艇用鋼製汽
艇ハ下瀬火薬爆発ノタメ全ク燃焼シテ僅カニ鋼材ノ
残存セシト言フ
十一、戦艦ノ顛覆ニツキ
露国戦艦ノ二、三比較的容易ニ顛覆沈没セシニ就
テハ元ヨリ種々ノ原因アルベシト虽モ露国将校ノ多数ノ
意見ハ炭庫外中下甲板ノ多量ノ石炭ヲ搭載セシニ
アリト言フニ一致ス参考ニ資スベキモノト認ム
明治三十八年六月五日 第三隊長 山田大尉
三笠艦長 伊地知彦次郎 殿
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（空白）

Страница 1
砲戦ニ関スル規定
明治廿八年四月改定
Страница 2
（空白ページ・欄外に「海軍」「1252」の記載あり）
Страница 3
砲戦ニ関スル規定
砲戦ハ六尹砲ノ試射ヲ以テ開始シ然ル後十二尹砲ノ射撃ヲ開始セシム
試射ハ砲術長ヲシテ之ヲ施行セシム砲術長豫メ試射ニ関ル
方法ヲ講究シ置クヲ要ス
六尹砲以下諸砲ノ射撃開始ハ左記距離以内トス
六尹砲　六千米突
十二斤砲　四千五百米突
三斤砲ハ至急射撃ノ耳
但シ時ノ情況ニ依リ射距離ヲ伸長スルコトアル此場合ニハ特ニ
開始ノ時機ヲ指令ス
各砲ノ射撃速度ハ特令スルモノ外砲台長ノ撰擇ニ一任ス
Страница 4
要ハ急射濫発ノ弊ヲ拒キ沈着精狙ニシテ射撃ノ効果ヲ
収ムルニアリ
但シ急射撃ハ三千米突以内ニ於ケル駆逐艦水雷艇ニ対
スル外令スルコトナシ
十二尹砲一斉発射ハ衝突ノ前、若クハ衝突仕損ノ際及壓敵
ニ近接シタル外施行セザルモノトス
砲撃開始前艦橋ヲ下リタルトキ射撃諸元左ノ如ク
本艦ノ速力　敵ノ速力　修正射距離　目標
砲戦中ハ絶ヘズ左ノ事項ヲ砲台ニ通知セシム
本艦速力ノ変更　目標ノ距離　目標ノ変更
弾着ノ状況　轉舵
Страница 5
目標ノ距離ハ砲術長ヲシテ各砲台ニ其傳達及時間中起ル
可キ距離ノ変化並ニ弾丸飛行中ニ起ル可キ各種ノ修正
ヲ施サシムルヲ令セシメ各砲台長ハ苗頭ノ修正ノ外射
距離ノ修正ヲ許サズ唯各砲台長ハ射距離及弾
着ヲ考察シ常ニ変ニ應ジ独断専行以テ砲火ノ効
力ヲ收ムルコトニ注意スヘシ
砲戦中志気興奮ノ極弾着ノ不正ヲ誘起スルアルハ
一時打方待ヲ令シ目標距離ヲ與ヘテ後打方ヲ令ス
ルコトアルヘシ
六尹以上ノ砲ニ在リテハ装填スヘキ弾丸ハ常ニ鍛鋼榴弾トス
徹甲榴弾使用ノ時機ハ特ニ之ヲ令ス
Страница 6
十二斤以下諸砲ノ弾種ハ特ニ規定セズ
射撃ノ目標ハ第一戦隊戦策ノ趣旨ニ基キ勉メテ敵ノ
先頭後尾若クハ翼端ニ集弾スルニアリ然レドモ某砲台若ク
ハ某砲ニシテ指令セラレタル目標ニ照準スルコト能ハザルトキハ砲
台長適宜目標ヲ変更指令スルヲ要ス
艦隊トノ交戦中敵駆逐艦若クハ水雷艇ノ現出シ来ルキ
其両者ニ対シ砲戦スルノ必要アルトキハ十二斤以下ノ諸砲ヲシテ先
ツ駆逐艦水雷艇ノ来襲ニ備ヘシム
目標ノ照準点ハ常ニ水面ト上甲板縁トノ中央部ト定ム
但シ縦射ニ在リテハ艦首若クハ艦ノ中央部ヲ照準セシムヲ
Страница 7
要ス
戦闘中射撃諸元ノ傳達及言令指示声管若クハ
通報器ニ依リ射撃ノ始終中止其他必要ナル命令號音
若クハ言令ヲ以テ指令ス
両舷戦闘中單ニ一舷ニノミ或ル命令ヲ下サントスルトキハ命令（號音）
ノ前ニ右舷（Ｇ）一声左舷（Ｇ）二声ヲ付シ区別セシム
戦闘ノ號音ニ装填スヘキ弾薬ノ弾薬庫ヨリノ供給ハ専ラ使
用シ各砲共應急弾台ニ供フルモノヲ使用スルコトナシ
但シ急速ニ初度ノ装填ヲ要スルトキハ此限ニ非ス此場合ニハ
戦闘ノ號音ニ續キ駆足ノ號音ヲ吹カシム
應急弾台ニ備ル弾丸ハ各砲共最モ有効ナル射撃界
Страница 8
ニ於テ発射ノ速度ニ対シ弾薬庫ヨリノ供給伴ハザルトキ之ヲ
使用スルモノトス
片舷戦闘中急射撃ヲ施行スルキ若クハ戦闘側砲揚弾
機ニ故障ヲ生シ弾薬ノ供給不足スルトキハ非戦闘側砲員ハ
運弾手トナリ各対舷ノ砲ニ弾薬ヲ供給スルモノトス
但シ「ケースメート」砲ハ此限リニ非ス
片舷戦闘中上甲板砲側ニ火災ヲ生シタルキハ非戦闘側砲員
ヲシテ消防ニ従事セシメ両舷側交戦ノ場合ニ在リテハ特ニ消
防ニ従事スヘキ砲員ヲ指令ス
交戦中一時砲員ノ補欠方法ヲ左ノ如ク定ム
第一、反対側砲員（同種砲）ヲ以テ補充ス
Страница 9
第二、反対側砲員ヲ使用スヘカラザル場合ハ現ニ射撃ニ従
事セザル砲員ヲ以テ補充ス
第三、第一第二ノ方法ヲ盡シテ尚不足スルトキハ弾薬庫長ヲ
除クノ外弾薬庫員ヲ以テ補充ス
砲員死傷頻繁ニシテ為ニ弾薬ノ供給運搬ニ支障ヲ
来スハ戦況ニ應ジテ水雷部員ヲ以テ一時弾薬ノ供給ヲサシム
但シ其時機ハ特ニ令ス
Страница 10
（空白ページ）
Примечания к расшифровке:
尹 (Ин): Единица измерения дюйм (inch). «六尹砲» = 6-дюймовое орудие.
米突 (Метр): Единица измерения метр.
斤 (Кин): В данном контексте фунт (pounder). «十二斤砲» = 12-фунтовое орудие.
三斤砲ハ至急射撃ノ耳: Последний символ выглядит как «耳» (ухо), но в канбун/старояпонском часто используется как фонетик для «номи» (только/лишь). Смысл: «3-фунтовые орудия — только для беглого (скорострельного) огня».
トス: На странице 5 в конце строки про снаряды символ выглядит как «大» или искаженное «トス» (быть таковым). По контексту («всегда являются стальными фугасными снарядами») чтение «то су» (являются) наиболее вероятно.

Транскрипция (японский):
二、六、左舷戰闘モトヘ
〃　左四点、針路變換
八、敵ノ先頭發砲ヲ開始ス
〃　右舷戰闘、喇叭鳴り吹奏ス
敵彈ハ皆五十米左前ニ落下スルニ依リ此際便宜
距離七〇〇〇（※右下に記載）
九、三笠應砲各艦等ヨリ應戰
一〇、試射ヲ行ヒ緩射撃ニ移ル十三分右方止メ
一三、敵ハ先頭艦后部ニ下瀬彈爆裂ヲ見ル
一四、十吋砲ヲ発ス
針路ヲ右二点ニ変ス敵ヲ圧シテ益々接近シ一挙
敵ヲ圧滅セントス
巨　五八〇〇（※左下に記載、距離5800の意）
Комментарии и пояснения:
Документ представляет собой хронологию боя (журнал или рапорт) с указанием времени (в минутах или часах/минутах) и действий.
Время: Цифры «二、六» (2:06), «八» (8 мин), «九» (9 мин) и т.д. обозначают временные метки.
Навигация: Термины вроде «左四点» (влево на 4 румба/точки, т.е. 45 градусов) и «針路變換» (смена курса) являются стандартными морскими командами.
Бой:
«喇叭鳴り吹奏ス» — звучит сигнал горна (трубы).
«敵彈ハ皆五十米左前ニ落下...» — вражеские снаряды падают в 50 метрах спереди слева.
«三笠» (Микаса) — вероятно, упоминается флагманский броненосец «Микаса» (герой Цусимского сражения). Фраза «三笠應砲» означает «Микаса открывает ответный огонь».
«下瀬彈» (Снаряд Симосе) — упоминается специфический японский фугасный снаряд, использовавшийся в ту эпоху («шимоза»), который вызвал взрыв на корме («后部») вражеского головного корабля.
«十吋砲» — 10-дюймовое орудие.
«圧滅セントス» — попытка сокрушить/уничтожить врага.
Расстояния: Внизу указаны дистанции до цели — «距離七〇〇〇» (7000 метров) и «巨 (т.е. 距離) 五八〇〇» (5800 метров), что показывает сближение с противником.

Транскрипция (японский):
一五、面舵十五度
〃　敵ハ三本烟突ノ先頭ト認ム
巨　五七〇〇
一六、益々打テ敵ノ集弾盛ニ命中弾ヲ得テ
息ヲモツカズ打チカケル
一八、先頭ノ前部ニ大爆煙ヲ見ル之ニヨリ敵陣
形稍乱レ左ニ回頭逃奔スルガ如ク見ユ
避ケントスルモノノ如シ
巨　四七〇〇
二〇、右頭一斉変針敵ヲ逐フ時ニ敵ハ右眞又右眞ノ
後方ニ在リ又「右方止」
二二、目標ヲ後続戦隊ノ先頭ニ変ス「右方始メ」
Комментарии и перевод:
Документ продолжает описывать интенсивную фазу морского боя (предположительно Цусимское сражение, судя по упоминанию «Микаса» на предыдущей странице и характеру маневров).
Перевод событий по минутам:
15 мин:
«Руль право 15 градусов» (面舵十五度).
«Опознали противника как головной корабль с тремя трубами» (敵ハ三本烟突ノ先頭ト認ム).
Примечание: В Цусимском сражении японцы иногда путали корабли в дыму. Броненосец «Ослябя» имел 3 трубы, флагман «Князь Суворов» — 2.
Дистанция 5700 метров (巨 五七〇〇).
16 мин:
«Стрельба усиливается (益々打テ), концентрация вражеского огня высока (敵ノ集弾盛ニ), получаем попадания (命中弾ヲ得テ — здесь, вероятно, имеется в виду получение попаданий своим кораблем или успешные попадания по врагу в ходе размена ударами, но контекст "без передышки" намекает на ожесточенную дуэль), ведем беглый огонь без передышки (息ヲモツカズ打チカケル)».
18 мин:
«Наблюдаем сильный взрыв и дым (大爆煙) в носовой части головного корабля [противника]».
«Из-за этого строй врага (敵陣形) слегка нарушен, он поворачивает влево (左ニ回頭), выглядит так, будто обращается в бегство (逃奔スルガ如ク見ユ) или пытается уклониться (避ケントスルモノノ如シ)».
Дистанция 4700 метров (巨 四七〇〇). Дистанция сократилась до пистолетной для тяжелых орудий того времени.
20 мин:
«Правый поворот «все вдруг» (右頭一斉変針 — маневр, когда все корабли поворачивают одновременно), преследуем врага (敵ヲ逐フ)».
«В это время враг находится прямо на траверзе справа (右眞 — ушин) или позади правого траверза (右眞ノ後方)».
«Также [команда]: "Прекратить огонь с правого борта" (右方止)».
22 мин:
«Сменили цель (目標) на головной корабль следующего за ним отряда (後続戦隊)».
«[Команда]: "Открыть огонь с правого борта" (右方始メ)».
Ключевые термины:
面舵 (Омокадзи): Команда переложить руль направо.
右眞 (Ушин): Направление 90 градусов вправо (прямо по правому борту).
右頭 (Уто): Поворот вправо (обычно имеется в виду поворот головы колонны или одновременный поворот).
一斉変針 (Иссэй хэншин): Одновременное изменение курса всеми кораблями строя (поворот «все вдруг»).

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明治三十八年五月二十七日戦闘記
天候晴薄霧アリテ遠ク望ム可カラズ
波浪高ク艇ヲ打テ砕ケ将士一層ノ奮励努力ヲ期シ志気旺盛
ナリト申伝ヘス
午
前八時四十三分　戦闘部署ニ就ク
九時四十三分　風ヲ右舷ノ度ヲ掛ケ北端ヲ右舷四点ニ見ル
一〇、　　　　奇装隊列ヲ整ヘ我ガ左側ニ出テ洋間ニ回進シテ之ヲ
一〇、四五　　視察シ電ス
敵兵力ハ「ボロヂノ」型四隻「オスラビヤ」「シソイベリキー」
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「ナワリン」「アドミラルナヒモフ」不明「アドミラルセニャービン」型三隻
十二、五　　「イソ」（「ウラル」？）「アレキサンドル」二世「オレグ」「オーロラ」
〇時　　　　笠置ヨリ三笠ヘ電
敵艦ハ「ボロヂノ」型五次スノ「ナバ」ナビ
左翼ニ「アドミラル」型二隻次テ洋巡艦隊以下二班
〇時一三　　之ヲ笙テ無線電信機械ヲ含マセ日没ニ至ルマデ令ナクシテ取付けタリ
〇、一七　　速力十二浬ノ岐ズハ令ス
〇、二一　　回転ヲ六五ト号シ十トス針路東南風順
二点カ四一五　第一戦隊左舷四点五千米ニ在リ西航
ス航リテ困難ヲ始ム
今敵艦隊ハ下関海峡ヲ通過セント決心
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帆路不定鎮海通峡ヲ進メ令シ敵艦隊正午
蒼島北十二浬針路北米微東ト電アリ故恵
タニ捜索シテ行進スルコトヲ令シ
〇、四三　　第三戦隊運動一統　回転一六〇（若クハ六〇）
〇、四六　　沖島ヲ左舷二点半ニ見ル
〇、五〇　　右ニ四点変針
〇、五五　　檣楼旗
〇、五八　　甲板掃除
一、　　　　右舷二艦影ヲ認ム暫ラクシテ其十字ナルヲ知ル
一、一五　　対州北端ト長州ノ北端ノ中央ニ戦フアリ敵ノ南方
十浬ニ近寄リ意気洋々ラ煤煙サヘ認メズ
Page 4
午
後一、一〇　敵巻入八浬
一、一三　　沖ノ島左横ニ見ル針路西
一、一九　　第三戦隊左前方約二点
一、三八　　無線電信材ノ水採下ノ納ム
旗信敵艦ハ赤艦ノ南東六浬ニ在リ
敵ノ航首ヲ方ニ見ル
一、四〇　　第五、六戦隊ヲ右舷後背ニ見ル
一、四三　　敵ハ南東七浬ニ在リ
針路南八東末花水正神旗
一、四五　　敵ヲ左舷チム（チーム？）方向ニ
Page 5
一、四五　　戦闘旗掲揚
一、五一　　Ｚ（皇国興廃在此一戦ニ在リ...）一流
敷島列ヲ出テ〜
一、五二　　回転七十五
一、五七　　針路ヲ左四点ニ変更甲群七〇敷島列ニ入ル
一、五八　　左舷砲門ヲ開キ鍛鋼榴弾込メノ令アリ
二、〇一　　令アリ左方第二戦隊ハ敵ノ後尾ヲ攻撃セヨト
其時敵二列縦陣
Page 6
午
後二、〇六　左舷戦闘モトヘ、
左四点ニ針路変換
二、〇八　　敵先頭発砲ヲ開始ス
右舷戦闘、喇叭吹奏ス　距離七〇〇〇
敵弾ハ皆五十米右前ニ落下ス二発近距離ニ富ム
二、〇九　　三笠、鹿島、各艦等シク発戦
二、一〇　　試射ヲ行ヒ綾行撃ニ移ル十三分右方止メ
二、一三　　敵ノ先頭順后可ナリ下乗庫爆裂見ル
二、一四　　十吋砲ヲ発ス　距離五八〇〇
針路ヲ右一点ニ変ズ敵ヲ圧シウ益々接近シ一挙
敵ヲ鏖滅セントス
Page 7
二、一五　　面舵十五変
敵ト三分相似タリ先頭ハ沈ム　距離五七〇〇
二、一六　　打方「敵ノ準弾」一令命中弾ヲ得ル急ニ元気付ク
ケ在リ
二、一八　　先頭ノ前部ニ大煤煙ヲ見ル之レ敵陣　距離四七〇〇
形稍乱レタリ回頭ス我観之ヲ避ケントスルモノノ如シ距離
一次第遠カル
二、二〇　　右舷一点変針敵ヲ逐フ時ニ敵右翼右翼ノ
後方ニ当リヌ、安正
二、二三　　同標ヲ取換戦隊ノ先頭ニ変ズ行方不明
Page 8
午
后二、二四　敵ノ尾五二〇〇水烟四囲ニ湃グ戦盛ンナリ
二、二五　　三笠ヲ起原隊順隊、敵ノ弾痛ク外ト在リテ適宣運動
之ヲ静カに行フ　距離五九〇〇
二、三〇　　敵ノ洋信、弐号洋信、敵ノ失敗ヲ写シ再ビ
撃沈煤煙暗シ
二、三一　　一弾伊号煤煙ノ元ニ来ル幅広ク飛ブ如シ
二、三三　　三番十二吋砲一弾炸気ナシ　距離四五五〇
二、三四　　十二吋砲員ヲ補充ス砲戦倍注ナリ　距離四三〇〇
志気壇ノ上ル
二、三八　　敵再ビ右ニ回頭戦避ケント俯ニ脱走ヲ欲ス
二、四〇　　敵先頭火災起ル
Page 9
距離稍遠クナリ行クラ阻害方候ナリ
二、四三　　綾対スル目標ハ三番艦先頭進止自由意ノ如シ
敵廃艦ト思ハレチナ揺ッ黒煙浜ニ浸ス
二、四五　　回転七十五　距離不明敵艦隊無弾ヲ好ク盤ノ
如ク奔走ス空中弾ハ敵ナリヤ味方ナルヤ知ルナク敵ハ
乱レタリ、然レモ敵数ハ立ッヲ明トナリ
二、四七　　砲火冷部
二、四八　　戦
努ヲ見ヨ
Page 10
二、五〇　　目標ハ敵夏左衛？右方始メ　距離四九〇〇
二、五一　　右方候ラ
二、五三　　右方収ム
二、五四　　候ラ
二、五五　　敵先頭大火災（三隻大火災ナル）
八、斉動首櫂陣トナル
二、五六　　敵我ニ向ッテ進ム右方収メ　距離四四〇〇
敵ハ去リノ斉回頭カ
Page 11
二、五七　　右方候ラ
三、〇〇　　八吋砲敵ノ光吹ヲ打テ　距離四九〇〇
三笠ノ後檣橋上ノ左支索ヲ見ル大将旗ハ其上ニ
翻リ居リ十吋砲破片僅ニ十袋ニ点ズ
三、〇一　　右方止メ
时ニ依我ノ隊形
（図：戦隊ノ隊形）
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三、〇二　　左八点斉動逐列連候陣ヲ作リ左舷戦闘
我同下ニ立ツ
三、〇三　　敵皇食ハ作ラマセン（※「敵皇室（スワロフ）ハ...」の可能性あり）
第二戦隊右舷ニ見ル敵上包戦急ニ
（図：矢印等）
三、〇七　　敵左舷前方ニ寄リ右方開始
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三、〇九　　無線電信「カーフ」ガ倒レ居ルカラ其調ヲ結ベ　距離三五〇〇
三、一〇　　敵ハ快速ニテ洋行イズール堕敵右方出ツ
三、一二　　急ゲ一発ノ見舞ヲ受ケ民チナルヲ目撃ス　距離三〇五〇
猛烈ナル射撃ニテ周囲血戦ヲ賭スルガ如シ
三、一五　　敵陣混乱シ首尾相向フ（図）
三、一六　　儀式距離兵ヲ近メ僅ニ二五五〇ノ間ニテ惨モ
次第ナル為体結末付カヌ如シ
三、一七　　右方候ラ
一、一九　　右方始　距離二二〇〇
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后
三、二〇　　二層四二〇〇敵「臣」別戦列ハ疾走シテ退ク
三、二一　　津凍荷八〇来ルモ于
三、二二　　右方止メ八吋砲右方ニ距離測リ無シ　距離四八〇〇
三、二四　　敵ハ一斉回頭失ヒ大火ニ焼ル
三、二五　　敵ノ七番目「アドミラルナヒモフ」ヲ目標トス
三、三一　　敵艦十五変左四点回面変換
「休題」敵立烟突ハ戦列ヲ去リ半浸洋際ニ漂へリ
火災中ニ乗員忙ヲロフ
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三、三九　　先左八斉動旗ヲ二至陶ケ四分回改ス
四ノ二番ヲ連印トス
四、〇二　　進四黄ノ本信ヲ右舷戦闘開始
視テ東南東
五、〇三　　回転七十五
五、〇四　　敵逃棄スル廃艦ヲ為近付きシ我ガ順一隻白
烟ヲ上ゲ
三、三五　　左ニ変針次テ変針沖島ヲ右舷ニ見ル
三至左二点変針更ニ左八点ニ変針ス
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午
后四、三〇　敵ヲ捕ルハ〇〇米ニ見エ左舷ノ回次スト航
海長ノ命ニヨリ沈没スルハ針路ノ周カズ
四、三四　　敵発見艦　距離九五〇〇
右梢方ニ当リ第五戦隊砲声聞ク
四、四四　　三笠広苑ニ入ル右舷戦闘　距離九〇〇〇位
四、四七　　左当舵試射　七〇〇〇
四、四九　　敵陣両分シ見ル
四、五〇　　沈火信如キ黒アリ
四、五一　　右方候ラ距離高ク近接ス
四、五五　　目標ヲ巨艦ニ改メ卵三万行ッ砲撃セム
四、五七　　復戦ト距離六〇〇〇
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半沈没敵「スワロフ」型ヲ右舷四点ニ見ル大火
止マセタリ
四、三一　　左伝中砲鋼鉄ニ一小弾命中黄ヲ放ッガ
嘴ヲ要心セヨ
音烟敵右陽ト戦闘始
四、四二　　女方収メ　距離七五〇〇
四、四五　　弟ハ第二戦隊ヲ先次ニテ第一戦隊綾リリヌ
（図）
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后
四、五一　　七点量単横陣ト為シ分煙ヲ報ズ七八〇〇
敵四隻八隻ノ二列
（図）
四、五〇　　お方候ラ針路東南東ニ取リ
三、五二　　大兵ヲ敵艦大白煙上ゲ
三、五五　　お方止メ
三、五八　　八斉動針路ＮＮＥ
大兵ハ前檣倒ル数発ヲ急送ス黒点ヲ用ヒシカ
三、五五　　大黒屋春発玉等ト喝フ
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之主事駆逐隊向彼撃ヲ行ヒシ
右方止メ「ボロヂノ」向ケアルカラ砲ノ手入スル
四、四八　　八戦隊ノ行信四五下ス
四、五一　　本戦隊ハ左一倍オモテノ「アスパイヤ」ヲ狙フ
四、五五　　囲持ハ五旗信通ジ亦進メ針路ＳＥ煙草許ス
甲板掃除
五、〇〇　　右舷戦闘ノ行信シ戦隊ハ地雷発見取舵ヲ命ズ
距離敵迄六一〇〇
針路南敵ＳＷ八〇〇〇ニ見ル右舷